私とサリンジャーとの出会いは大学時代のゼミであった。
英語がペラペラになりたいと思い語学のゼミを希望していたが、くじ引きで見事に落選。余っていたのはサリンジャーのゼミであった。( すいません。。)
仕方なく入ったゼミであったはずなのに、卒業するころにはサリンジャーの描く「飾らない生身の人間像」に惹かれていた。
ゼミに入った年にサリンジャーが死亡(2010年1月27日)というのも中々話題性があって運命を感じた。
今では、このブログのタイトルもそこから付けたぐらいにサリンジャーは私の中で欠かせないものとなっている。
私が大学を卒業した翌年、当時のゼミの先生が『サリンジャー ―生涯91年の真実』(高いけど是非読んで欲しい!)を発表したので
ゼミの時に取りかかっていたプロジェクトがあると言っていたのはこれだったのか!と本屋で1人納得していた。
なんだかんだで私と切っては切り離せない存在のサリンジャーをもっとみんなに読んでもらいたいので
紹介したいと思う。
生涯にたった4つしか作品を発表しなかったので、さらりと読破出来てしまうのもポイントである。(そこがかえってミステリアスなのだが…)
まず、サリンジャーと言えば『ライ麦畑でつかまえて』が有名であるが、個人的に『ナインストーリーズ』短編集をオススメしたい。
下記は、その9つの短編の中でも私のお気に入りの4つである。
第1位
A Perfect Day For Bananafish バナナフィッシュにうってつけの日 (1948)
短編集第1話目で、最も重要な作品の1つ。私の中でサリンジャーと言ったらバナナフィッシュが1番に出てくる。この後の、グラス家の兄弟の物語として語られる最初の物語でもあるのでなにげに重要度は高い。
グラス家の長男であるシーモアの自死を描いているのだが、結局なぜシーモアが自殺しなければならなかったかが
謎のまま。それどころかこの短編内でのシーモアの人間像が不十分すぎて、読み終わった時にはモヤモヤが残る。大学時代ゼミでも議論したが結局真相は何だったのだろう。サリンジャーしかわからないか…。
第2位
For Esme - With Love And Squalor エズメに――愛と悲惨をこめて (1950)
私がバナナフィッシュの次に好きな作品。読んだ後号泣しました!
第2次世界大戦に従軍したX軍曹が、イギリスで訓練を受ける合間に知り合った少女エズメとの思い出を述懐する物語。
カフェで雑談を
する前半と深刻な神経衰弱に陥ったX軍曹がエズメからの手紙を受け取る後半に話が分かれている。
サリンジャーの話全てに共通すうことだが、X軍曹が戦場でどのような死地をくぐりぬけたかは一切語られない。
中でもエズメの最後の手紙は涙ものだ。ついでに言うとエズメの弟のチャールズのメッセージも。
You take a really sleepy man, Esme, and he always stands a chance of again becoming a man with all his fac-with all his f-a-c-u-1-t-i-e-s intact.
3位
The Laughing Man 笑い男 (1949)
コマンチ団の団長が失恋する話。ただそれだけの話なのに、作中作の「笑い男」の話と巧みな描写力によって話が深い物になっていると感じる。団長が自分で勝手に作った「笑い男」(ヴィクトルユーゴーの『笑い男』がモチーフ)
の話と団長自身のメリージェンとの恋物語の私情がリンクして起承転結が繰り広げられるのが面白い。さすがサリンジャーだなーと思った作品。
4位
Uncle Wiggily In Connecticut コネチカットのアンクル・ウィギリー (1948)
メアリージェーンとエロイーズ、そしてエロイーズの娘ラモ−ナの話。怒り、寂しさ、諦めと後悔がまざりあった複雑な感情が漂っている。ラモ−ナは幼いながら心に歪みをもっていて奇矯な言動がちょっとホラーっぽくて冷やっとする。こちらもサリンジャー特有の戦争がちらっと絡んだ作品。(戦争風景は描かないけれど、戦争によっての被害や影響を受けた人達シリーズ)
最後に、野崎さん訳か柴田さん訳か村上さん訳かいろいろ言われてますが
私には野崎さん訳が1番しっくりきました!
友達に聞くと村上さん訳の影響で読んで見たと言う子が多いけど。
私には野崎さん訳が1番しっくりきました!
友達に聞くと村上さん訳の影響で読んで見たと言う子が多いけど。